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かかりつけ医について(連載7①)尼医ニュースより転載 介護支援専門員(ケアマネジャー)の投稿

かかりつけ医

尼崎市社会福祉協議会居宅介護支援事業所
主任介護支援専門員 益永 昌代氏

かかりつけ医のイメージ

 かかりつけ医と言われて、ぱっと浮かんだのは、生まれる前から知っていて、家族全員のこともわかってくれている先生というイメージです。
 私は元々東海地方の山奥の出身で、人口3000人くらいの村に住んでいました(今は人より獣の方が多いようです)。お医者様と言えば村の診療所でしたが、家からは遠く、何かあれば隣町の先生のところに、車で1時間くらいかけて受診していました。祖父母もその先生が家で看取ってくださり、私も子供のころは親が車で連れて行って診察を受けていました。そのような環境の中では、「あそこの○○ちゃん」といった感じですべてを知っていて、まず相談するところがかかりつけの先生でした。
 では現在の仕事で動いている尼崎ではどんな感じかなと思い、同僚にも聞いてみました。かかりつけ医と言われるとどんなイメージ?との質問には

  • 病気以外で本人の性格や生活の状況を把握している。
  • 患者さんが信頼して話しやすい。
  • 医療面での心配事や不安事を何でも相談でき、必要な時は専門医につないでくれる。健康に関する相談窓口。
  • 病医院周辺の地域現状を知っている、地域に根付いている。

等の意見が聞けました。利用者さんとその家族、地域のこともわかっていてくれる存在だと皆思っているようです。

さすがかかりつけ医の先生だと思ったときは?

 次に利用者さんのことで相談してよかった、さすがかかりつけの先生だと思ったときはと聞いたところ、

  • 通所サービスで血圧が変動していてお風呂に入れられないといわれたときに、基準を示してもらい、入浴がしやすくなった。
  • ショートが見つからず家族の介護負担が大きくなった時にレスパイト入院の病院を紹介してもらった。
  • 各事業所でかかわり方がちぐはぐになっていた時に、注意点や今後のことについて示してもらい、ケアの統一ができた。

等の意見が出てきました。ケアマネ個人では行き詰ってしまったとき、アドバイスをいただき本当に助かりました。

困ったなと思ったときは?

 逆に先生とのやり取りで困ったなと思ったときはと尋ねると

  • 利用者や家族に病気のことを説明しておいてといわれたこと。
  • 「注意事項を守るようにちゃんと言っといてください」等ご本人や家族にもお話しいただきたいことをケアマネだけに振られたとき。
  • それは家族に頼むことではないかと思われることをケアマネに頼まれたとき

といった意見が出てきました。なかなかご理解が難しい方への説明は大変なことです。でも先生が言ってもきかないことはケアマネでは…と思うこともあります。

 皆かかりつけ医の先生との関りのエピソードは持っているようです。利用者さんのこと、地域のことをわかってくれている「かかりつけ医」の先生と「ちょっといいですか、お願いがあるんです」と気軽に声をかけさせていただけるようになれば、利用者さんの生活支援の幅も深みも増すように改めて思いました。これからもよろしくお願いいたします。

医師からのコメント

島田真先生からのコメント

 かかりつけ医とは、日本医師会の定義を参照すると、診療を行うにあたって生活背景等も含めた全人的な医療に努力し、地域の医療福祉の組織と連携し最善な診療を心がける。そして専門家として医療の情報を提供するとともに社会的活動にも取り組む医師というところでしょうか。地元のこの「先生」はまさにそういう医師に当てはまるように思えます。確かに都会である尼崎ではどのように実現し対応していくべきなのか難しい問題もあります。しかし、地域のことをよく理解し、医療福祉の連係の要としての医師がやはり重要な要因であることが分かります。ぜひ心がけたいものです。

松本重人先生からのコメント

かかりつけ医とは                    
 この言葉、最近よく耳にします。厚労省通達のワクチンの適否でさえ「かかりつけで・・・・」という文言を見ると、よほど重要な意味を持っていると思ってしまいます。しかし、実際は「かかりつけ」とは非常に曖昧な言葉です。というのも医師、介護担当、患者さんでは解釈がかなり異なるところがあるからです。ケアマネジャーの方々のご意見を要約すると「かかりつけとは患者さんのことについて主に健康上の諸問題についてオールマイティに対応できる」ということになりますでしょうか。なるほどおそらく介護担当から見ると、「かかりつけ医」とは患者さんの健康についてすべての医療的な責任を負うものという立場であろうと思います。それは地域医療のシステムを動かすときに、その方が効率的であり、安心できるという患者さんがおられるからだと思います。しかし患者さんから見ると若干違った視点もあります。ネット時代にクリニックはその検索も口コミも、医療内容も容易に検索し選択できるようになっています。私の地域だけではないと思うのですが、診療所乱立から(良い側面もありますが)医療サービスの差別化、低コスト化がなければ生き残れない様になってきています。すると患者さん側も、「注射はAクリニック、リハビリはB診療所」といった具合に複数施設に「かかる」ケースも多く、それぞれを「かかりつけ」と認識しており、医師もそれを認知しています。では医師の立場ではどうでしょうか。私も地域医療活動を始めてまだ10年あまり、勤務医と地域医とは全くことなることに戸惑う日々です。ご存じのように勤務医は、専門的に細分化された医療パーツを病気の治療に当てはめることを主業務とします。つまり、循環器科には心臓病、小児科には小児のみ限定されて医療相談に来られます。そして、地域医として従事されておられる先生のほとんどは、いろいろな事情から勤務医から地域医に「転職」します。そこで思い知らされるのが、「専門外という立場は地域医にはない」ということです。ドラマの題名ではないですが「ドクターコトー」の心意気でもないと、この仕事はできません。実際の孤島の医師は激務ですが、医療者としては幸福です。というのも患者さんの病気はもちろん、家族のことやその人の癖に至るまですべてひっくるめて「諸般の事情を知る」ことが環境上容易であるからです。病気にはガイドラインに沿った治療法があり健康保険上許される医療というものがあります。医師の裁量権という意味ではなく、患者さんの家庭環境や経済的な理由など、様々なゆらぎの中で患者さんに納得と安心を最大限得られる解答を見つけていくのが地域医です。しかし孤島と違い、大都市では医師も患者さんも選択肢が多い分「転医」も容易です。地域医で重要な「事情」を知ることは環境として難しくなってきています。医師も患者さんも人間ですから「諸般の事情を知る」くらいの関係を築くには、時間も機会も多く必要です。加えて病状をはじめ、様々な要因から患者さんの心情も刻々変わります。安定と思われた関係が、ふいに崩れる瞬間も希ではありません。多くの選択肢があるということは、適当でない患者-医師関係を作り直すことが容易である反面、なかなか「かかりつけ」が浸透しない理由でないかと思っています。これは「固定担当医」として従事されておられる勤務医諸先生方には分かりにくい不安定さではないでしょうか。そこで一つ、私のような末端のものが言うことでないことを承知であえて申し上げれば、だれに「諸般の事情」をよく理解させ、あるいはどのようにして理解してもらうかを調整することもケアマネジャーさんの仕事として重要ではないかと思います。「なんでも相談できる医者」が地域医としてどのくらい存在するかは、介護担当の諸氏は実感されていると思いますが、そういう医者を見つけるというより、そういう医者を作っていこうという発想転換もしてみると今と違った景色になるかもしれません。と最後に付け加えてみます。コロナ禍で地域医療は非常に流動的になっています。一部の医師に過負荷がかかっており、だからこそ「かかりつけ」を定義してその枠中に多くの医師に参入していただきたいという方向性は当然のことと思います。しかし、「ドクターコトー」がそうであったように、かかりつけ医はご近所さんで作っていくしかないように思います。時間はかかりますが、ケアマネジャーさんも話せる地域医をどんどん増やせるよう動いてみませんか?

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