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かかりつけ医について(連載9①)尼医ニュースより転載  病院 医療連携室 看護師の投稿

かかりつけ医

                  関西労災病院 医療連携総合センター 看護師長 櫻井智美  

救急部からの 転帰報告

 当院は年間6,275件(R2年度)の救急対応をさせていただいており、そのうち約46%を救急部で対応させていただいています。かかりつけ医のおられる患者さんも当然救急搬送されてくるわけですが、当院救急部は、数年前から「かかりつけ医から情報をいただき、転帰を報告させていただく」ということに力をいれて取り組んでいます。髙松部長にそのあたりのお話をうかがってみました。

━ここ数年、緊急入院後早い段階でかかりつけ医に情報提供依頼をしてくださったり、早期に転帰報告をしてくださっています。何かきっかけがあったのですか?━

 「救急で対応し、院内で転科するケースが多々あります。院内で転科した場合に、かかりつけ医へ転帰を報告していなかったので地域の先生からご指摘を受けたことがきっかけです。
 またすぐ自宅退院できず、転院される患者さんも多いのですが、ご家族から地域の先生にそのお話が伝わるということもありました。きちんと転科や転院などの転帰を地域の先生方へ報告することを徹底するべく部内で話し合いを行いました。緊急入院前の情報をいただき、診療に活かすことも当然の目的ではありますが、転帰報告をきちんと行うことで、患者さんがスムーズに住み慣れた地域にもどっていけるように日々努力をしているところです。」


 救急部だけでなく、当院からは、緊急入院された患者さんやご家族からかかりつけ医を確認させていただき、情報提供のお願いをさせていただいております。地域の先生方には、お忙しい中お手数をおかけいたしますが、今後も患者さんへのよりよい医療の提供のために、ご協力をお願いできればと存じます。

退院調整看護師より

 地域包括ケアシステムの中で当院は高度急性期病院の役割を担っており、医療連携総合センターは病院と地域をつなぐ重要な役割を担っています。
 退院調整看護師として患者さんと地域の先生方の橋渡しをし、住み慣れた地域へ戻るお手伝いをさせて頂いています。その中で「かかりつけ医」という言葉に対する患者さんや医療者の認識について、実際にあった事や感じた事をお伝えしたいと思います。

事例1

 「家の近くの循環器内科の病院を教えてほしい」と患者さんが相談に来られました。お話を聞くと、当院の循環器内科が終診となるので、近医に行く様説明を受けたとの事でした。当院に紹介してくださったA医院について患者さんに確認すると、現在も定期的に通院され、内服薬も処方されていました。しかし、患者さんはかかりつけ医の先生を「循環器の専門医でないといけない。」と思い、循環器科の専門医を新たに探さないといけないと認識されていました。当院の循環器主治医に専門医の必要性を確認すると、現在のかかりつけ医であるA医院でよいとの事でした。その旨を患者さんにお伝えし、循環器内科の疾患も含め、引き続きA医院にかかりつけ医をお願いされました。

事例2

 外来看護師より、消化器系のがんの末期で在宅療養の調整の依頼があり、患者さんと面接をしました。「かかりつけ医」を患者さんに確認したところ、「B内科」と答えられました。そのためB内科に相談しましたが往診は実施されておらず、B内科と本人や家族と相談の上、C診療所に在宅医を依頼する事になりました。数日後、患者さんの妻が定期通院しているDクリニックを受診。夫に在宅医がついた事を伝えたところ、Dクリニックから「うちにかかっている患者だが、何故他の病院を紹介する事になったのか。」との問い合わせが当院にありました。その時にわかった事ですが、患者さんはDクリニックにも受診歴がありました。更にDクリニックはがん末期の患者さんの在宅医療も担っておられました。私は、Dクリニックからの問い合わせに、患者面談の際には患者さんからDクリニックについては名前が出なかった経緯を伝えました。Dクリニックの先生は「自分がかかりつけ医」と長年に渡りこの夫婦を気にかけていたのですが、「俺だけがかかりつけ医と思っていたんだね。」ととても残念そうにつぶやかれました。在宅医決定後にわかった事例であり、在宅療養の調整に際して、情報の確認が不十分であったと反省しました。

 これらの事例から、「かかりつけ」という言葉の持つ意味が極めて曖昧である事を再認識し、退院調整看護師として「かかりつけ医」という言葉の解釈が当院医師や看護師をはじめ、関連する医療職員や地域の先生方、患者さんや家族との間でずれがないように情報を確認していく事の難しさとその必要性を感じました。
 患者さんとの面談や情報収集の際には言葉の表現を工夫しながら、患者さんやご家族に、丁寧にわかりやすく伝えることが出来るようにしていきたいと思います。今後もよりよい地域連携が行えるように努力していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

医師からのコメント

横田芳郎先生からのコメント

 病診連携を行うにあたり、情報共有が基本になるわけですが、診療所から紹介された高次医療機関での診療過程において転科や転院となるケースもあり、退院時には紹介元へ情報が行きわたらない事が考えられます。貴院のように転科や転院などの転帰報告を徹底していただくことは大変ありがたいことだと感じました。私は、地域包括ケアシステムの中で中心となるのは、医師ではなくケアマネジャーであって、患者の生活を守るために、全ての情報(どこに入院しているか、どんな状態かなど)を把握し、かかりつけ医や看護師などと情報共有できる環境の構築が大切であると考えています。その為、退院時にはできるだけ退院調整カンファレンスを開催していただき、我々医師(かかりつけ医として)を含め多職種が積極的に参加すべきです。年に1,2回しか来院されない患者であっても、場合によって患者が信頼している町医者であれば、かかりつけ医なのではないでしょうか。なぜなら、体だけを診ず人を見ている相談者でもあるからです。専門的医療が要求される場合は、専門医と併診にすればよいと考えています。尼崎市の医療介護連携協議会でも協議された事の一つに、お薬手帳カバーを利用した情報共有ツールとして「あまやくポケット」があります。これを見れば、かかりつけ医やかかりつけ薬局などの連絡先や受診履歴などが分かるようになります。医師会では、病院のMSWや退院調整看護師のみなさんにも情報共有できるよう努めたいと考えていますのでよろしくお願いいたします。

両角隆一先生からのコメント

医師会のWebサイトにかかりつけ医についての詳しい説明があります。かかりつけ医とは、『なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師』と定義されております。
 さらに、これを具体的に説明し、『●日常診療において、患者の生活背景を把握し、適切な診療及び保健指導を行い、自己の専門性を超えて診療や指導を行えない場合には、地域の医師、医療機関等と協力して解決策を提供する。●自己の診療時間外も患者にとって最善の医療が継続されるよう、地域の医師、医療機関等と必要な情報を共有し、お互いに協力して休日や夜間も患者に対応できる体制を構築する。●日常行う診療のほかに、地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加するとともに保健・介護・福祉関係者との連携を行う。また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する。●患者や家族に対して、医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う。』とのことであります。
 皆様、すでにご覧になっていることとは思いますが、ここに最も端的にめざすべきかかりつけ医像があると思い、転載させていただきました。私は、私の外来に来られている患者様に、“私はあなたのかかりつけ医です”と積極的に伝えたことはありませんが、ひそかに“かかりつけ医たるべく最善を尽くします”とこころして明日からの診療に当たりたいと思います。

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